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H31 新春座談会

伊豆の地域力を掘りおこし・高め・活かす

伊豆地域は、昨年、念願の「世界ジオパーク」も決まり、今月26日には天城北道路が全線開通、さらには来年に東京2020オリンピック・パラリンピック自転車競技の開催を控え、伊豆の持つポテンシャルがより脚光を浴びる機会となり、それが活かされるチャンスが来ている。昨今、地域力という言葉が色々な解釈で使用されており、一般的には、地域の持つポテンシャルや住民の発揮する力という意味で使われているが、伊豆半島では地域力を地域の魅力、安全な環境、行政と連携したまちづくり力と捉え、地域力を高めるために各方面から情報を発信していくことが重要だ。そこで今年の新春座談会では、伊豆半島の各方面からゲストを招き、伊豆の地域力を高めるため、明るい地域の将来像を描きながら、伊豆の魅力や課題、今後の展開などについて語ってもらった。


出席者
・静岡県 沼津土木事務所 所長 原 広司氏
・静岡県 熱海土木事務所 所長 佐藤 勝彦氏
・東日本旅客鉄道株式会社 横浜支社 熱海駅駅長 宮原 智子氏
・加和太建設株式会社 施設運営事業部
 道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」コンシェルジュ 渡辺 量子氏
・株式会社伊豆急ハウジング 建設事業部営業部部長
 三島建設業協会 広報委員 村上 千明氏
・三島建設業協会 広報委員 座談会司会 出口 直樹氏
・三島建設業協会 会長 小野 徹氏
≪司会≫
・三島建設業協会 広報委員会 委員長 山本 裕二氏

山本 あけましておめでとうございます。本日はお忙しいところ新春座談会にご出席いただき、ありがとうございます。今回は「伊豆の地域力を考える」をテーマに皆さまから忌憚ない意見を伺いたいと思います。開会に先立ち、小野会長からごあいさつをお願いします。
小野 近年、伊豆地域では韮山反射炉が世界遺産になり、東京2020オリンピック・パラリンピック自転車競技の開催が決まり、今月26日には天城北道路の全線開通を控えるなど、大変おめでたいことが続いていると感じます。一方で、過疎化が進行しており、安心していられる状況ではありません。良い風が吹いている今、いかにして地域の活性化につなげていくかが最もこの地域にとって必要なことだと考えています。今日お集まりいただいた皆さまには大きな夢を語っていただき、バラエティーに富んだ話題が出ることを期待しています。本日はよろしくお願いします。
出口 今日は伊豆半島でそれぞれ異なる地区にお住まいか、あるいは職場がある皆さまにお集まりいただいています。まず皆さまの地域での現状や課題についてお聞かせください。
村上 伊東はかつて常時渋滞が発生しておりましたが、近年では道路整備により緩和されました。それでも休日には渋滞が発生することも多く、観光で来ていただいた方の利便性を向上させるためにまだまだ整備の余地があります。加えて人口の減少が進んでいおり、担い手が不足しております。若者が憧れるような地域にしていく必要があると感じています。
宮原 地域の発展なくして私たちも発展はなし得ません。少子高齢化が進んでいく中で、どのように交流人口を増やしていくかが課題です。そのためにはここにしかない地域の魅力をしっかりと発信していかなければなりません。地域の皆さまと魅力あるまちづくりに取り組んでいく必要があり、これまで同様にさまざまなキャンペーンを展開していきたいと思います。

 私は函南の出身で一昨年5月に開業した道の駅「ゲートウェイ函南」に行きたいと思うのですが、混雑してなかなか行けません。自動車を利用する人にとってはまさに「伊豆の玄関口」となるため、渋滞緩和対策が重要です。土木事務所といたしましては道の駅に寄られたお客さまがストレスなく次の目的地に行ってもらえるような対策が課題です。
佐藤 昨年の4月に初めて東部地域に赴任してきたのですが、うわさ通りの熱海の活気を感じております。土日のみならず平日も混雑しており、市を中心に、静岡デスティネーションキャンペーン(以下DC)に絡むような仕掛けを行っていることと、駅舎のリニューアルも活気づいた要因だと思っています。伊豆縦貫自動車道の開通で中央部の交通は徐々によくなっていますが、東海岸沿いでは渋滞の改善ができていない状況なので、どのようにしてスムーズな交通を実現していくかが課題です。
渡辺 伊豆縦貫自動車道は私も通勤で利用していて親しみをもっている道路なのですが、便利な分、土日は渋滞しているため、お客様には国道1号、136号を併用するよう案内している状況です。また暗い道もありシルバー世代の方からは運転に不安を感じている声も聞くため街灯が増えればいいなあと思っています。

若者が憧れる元気一杯の伊豆に

出口 皆さまのお話を伺いますと伊豆半島は担い手不足や観光シーズンの渋滞のほか、熱海・函南などの伊豆の玄関口からストレスなくどのように目的地まで行ってもらうかなどの課題があるようですね。改善に向け、それぞれ皆さまが実践されている対策や意見などがあればお聞かせください。
村上 建設業のみならず、伊豆半島では全ての産業で担い手不足の課題に直面しています。具体的な対策などは模索しているところですが、「働きやすい環境づくり」を実現することが重要と考えています。
宮原 皆さまからも熱海がにぎわっているとおっしゃっていただきますが、伊東・下田、さらには伊豆半島全体が盛り上がっていくことが重要です。観光地としての伊豆半島ならではの魅力を広めることが不可欠であると考えます。
 
 伊豆縦貫自動車道ですが、土日に限らず、平日の朝夕も通勤時間帯で大変道路が混雑することは承知しています。伊豆縦貫自動車道は国が管理しており、複車線化が計画されている箇所は何とかオリンピックまでに間に合わせてほしいと思います。渡辺さんのお話にあった道路が暗いという点に関しましては今度国交省に伝えておきます。すべての渋滞を解決するのは現実的でありませんので、われわれとしては事業効果の高い施策を展開していきたいと考えています。ところで最近、富士山の価値を思い知らされました。平成27年にできた三島スカイウォークは想像以上のにぎわいを見せ、橋から見える富士山は観光客の心をつかんでいるようです。富士山を魅せるための道路整備、維持管理もやっていかなくてはならないと感じております。
佐藤 渋滞対策といたしましては、豪雨、台風時などに地域の業者の方と協力し合って道路規制の時間を少しでも減らせるような対策を考えております。また観光シーズンは工事をなるべく規制するなど、渋滞の緩和を図っています。昭和の後半から平成初期にかけて熱海では港湾整備が活発で、熱海サンビーチや親水護岸を整備し観光面でも一役買わせていただきましたが、渚地区第4工区の整備はまだ完了していないため、熱海の魅力を向上させていくためにも道路だけでなく、港湾にも目を向け、整備を推進していきたいと考えています。
渡辺 伊豆の玄関口として半島全体の活性化を考えつつ、函南地域の方のために何ができるのかを考えたいと思います。地域の人が元気であることは地域の魅力につながるので、魅力発信の一つとして地域の方と観光客の方をつなげる橋の方ような役割を果たしていきたいと考えています。
出口 伊豆半島には多くの課題とその解決に向けて取り組みが山積みですが、東京オリンピックの自転車競技開催など活性化につながるさまざまなイベントが続いています。特に今年はDCがあり、私が住んでいる熱海でも期待する声も大きいのですが、どのような企画が考えられているのでしょうか。
宮原 オープニングや各地域のイベントに合わせた記念列車の運行や、地域を周遊していただくウォーキングイベントなどを計画しています。また、伊豆半島7市6町からなる美しい伊豆創造センターと連携しながら、口コミ効果をねらった地元の皆さまの参加によるSNSでの情報発信に取り組んでまいります。DCはJRが主体となって進めるキャンペーンというより、地域にお住まいの皆さまや地元の全産業の方が参加する観光によるまちづくりであり、オリンピックでいえばレガシーのような世に残せる「観光客を呼ぶことができる仕組みづくり」を行ってこそ意義があるものと考えております。また、DCを活用して駅からの2次交通(バス、タクシー、AI型オンデマンド交通、シェアカー等)をスマートフォンなどで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できる「2次交通統合型サービス(「観光型MaaS」)の実証実験を伊豆エリアで展開していきたいと考えています。

真っ白な半島に道路・鉄道網を

出口 観光面では盛り上がりが期待できそうですね。一方でハード面ではいかがでしょうか。私は以前の座談会で小野会長が「全国の鉄道地図がありますが、何もなく真っ白なところが伊豆半島です。高速道路も半島の入口に少しあるだけです。北陸新幹線、北海道新幹線、圏央道と、全国各地でインフラ整備が進んでおり、このままでは伊豆半島が取り残されてしまうのではないか」とおっしゃったのが印象に残っています。
小野
 少しずつではありますがインフラの状況は改善に向かっており、さらにスピードアップさせていってほしいですね。
出口 東京オリンピックで自転車競技も開催されますが、その効果もあって伊豆にサイクリングで訪れる方も非常に増えています。伊豆ゲートウェイ函南ではサイクリストのための施設があると聞いているのですがいかがでしょうか。
渡辺 「スポークカフェ」というサイクリストたちの休息と交流をテーマとしたカフェを運営しています。そこではレンタサイクルがあり、1時間から7時間まで利用が可能です。車種も充実しており、身長140~190センチの方まで利用することができるので自転車に気軽に挑戦していただけます。サイクリストはもちろん、自転車デビューができる聖地として整備を進めています。自転車を鉄道車両内に持ち込めるサイクルトレインがさらに普及すれば、伊豆にはもっとサイクリストの方が訪れてくれると考えています。
出口 サイクリストの聖地としても伊豆半島は期待できそうですね。伊豆には課題も多いですが、ポテンシャルが高いので地域力を発揮できれば将来は明るいですね。皆さまありがとうございました。

山本 それでは、最後に一言ずつお願いします。
 これから本格的に雪氷の時期となり、観光の観点から見ても雪氷対策は非常に重要です。除雪などの迅速な対応に期待しております。災害時においては道路啓開などで建設業の機動力は不可欠であり、日ごろから大変感謝しています。将来にわたって協力体制を維持できる業界であるように、われわれは施策を考え展開しなくてはならないと考えています。
佐藤 伊豆の発展にはインフラを支える若い担い手の育成が不可欠です。自分の仕事に誇りを持ち建設業を盛り上げていく人材が増えることを期待しています。
宮原 私たちの役割は首都圏から伊豆へたくさんのお客様にお越しいただくことであり、DCを契機に地域の皆さまとともに伊豆の魅力を発信していきたいと思っています。2020年春には東京から下田をつなぐ新たな観光特急列車が運行開始予定ですので、ご期待ください。
渡辺 建設会社として本業だけでなく、地域の方とにぎわいを創出して元気なまちを作るということをモットーに事業を進めてまいります。それが建設業界が仕掛けるモデルとなり、地域の方々ともに歩んでいければと考えています。今回は参加させていただき貴重な経験となりました。ありがとうございました。
村上 建設業者としては、伊豆を訪れた方に安全安心な暮らしができるという印象を与えられるよう、道路などの社会資本の整備に貢献していきたいと思っています。
山本 今日は長時間にわたり貴重なお話をありがとうございました。最後に小野会長から謝辞をお願いします。
小野 昨今クルーズ船などさまざまな手段で、たくさんの方が伊豆を訪れています。それをどう活かしていくかが非常にに重要で、何とか過疎化を止めて、流入人口をどう増やしていくかが勝負です。今日皆さまから貴重な意見をいただきましたので、それを活かして良い地域にしていけるよう、建設業界としてもスピード感を持って取り組んでいきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。

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