創立70周年記念座談会
決意も新たに、理想を胸に団結で生き抜く
協会創立70周年を迎えた一般社団法人三島建設業協会(通称・三建)。
三建の伝統文化でもあり、連綿と受け継がれている「団結力」は、未曾有の被害をもたらした昭和33年の狩野川台風における災害復旧に、三建会員が総力を挙げて立ち向かったことに由来する。また、地域防災にかけた三建の先輩たちの思いは狩野川放水路建設へとつながり、昨年、狩野川放水路が狩野川台風級の台風19号から地域を守ったことは感慨深いものがあった。こうした歴史を紐解きながら、過去を学び、未来に活かすため、現在の協会運営の中枢を担っている正副会長、七つの常設委員会委員長が出席し、三建のあるべき姿を探った。(司会は広報委員会委員長=山本裕二)
座談会出席者
一般社団法人 三島建設業協会
◇小野 徹 会 長
◇佐野 茂樹 副会長
◇齋藤 稔 副会長
◇土屋龍太郎 副会長
(土木・災害対策委員会委員長兼務)
◇山本 良一 総務委員会委員長
◇森 勲 建築委員会委員長
◇森田 崇 安全委員会委員長
◇高島 勝 労務委員会委員長
◇石田 龍夫 企画委員会委員長
◇山本 裕二 広報委員会委員長
司会 本日は「創立70周年記念座談会」にお集まりいただきありがとうごさいます。また、先ほど小野会長には70年の歩みを振り返っていただきありがとうございました。ここからは現在の協会運営、委員会活動のほか、協会の存在意義などを話し合っていただき、今後、三島建設業協会がどうあるべきかを考えていきたいと思います。まずは協会運営や委員会活動などを通じて感じていることをお聞かせください。
小野 協会の運営の中で大きな役割を果たしてきたのが、「三建だより」です。昭和43年8月に創刊し、協会としての考え方、各委員会の活動状況などを会員や外部に発信するものとして、これまで一度も休むことなく毎月発行しています。会員の団結を図る一つの要素ともなっています。平成8年に工事完成保証人制度が廃止になり、協会の存在意義が問われたこともありましたが、狩野川台風や「三建だより」で培った団結力で乗り切ってきました。
土屋 土木・災害対策委員長として、平成25年から国・県・市を交えた東部地域道路啓開検討会に参画し、行政と現場の調整役を担っています。特に感じていることは事業継続計画(BCP)の充実です。有事の際にわれわれ建設業が事業を継続させることは地域住民を助けることにつながります。形だけのBCPでなく、中身のあるBCPの策定を訴えていきたいと思います。
佐野 建設業というものは気候、地形、地質などに左右される一品受注生産であり、全て内容が違うものです。官は一律にものごとを考え予算を縮小し、採算性を考える民を圧迫します。これは70年間ずっと変わっていない構図ではないでしょうか。ここで問題なのは官と民とのパートナーシップの欠如で、コミュニケーションが不足していることです。不調不落が多いのもこれによるものです。お互いにウィンウィンの関係なら、この業界は100年、150年と続いていくでしょう。
斎藤 70年の協会の歩みを振り返ると、改めて70年の重みを感じます。土屋副会長からBCPの話が出ましたが、今回のコロナウイルスの問題は自分の会社で発症したらどうすべきか、という問題を投げ掛けています。BCPの策定にはコロナは良い課題だと思います。変化の激しい時代において、われわれはいつも勉強することは欠かせないことであると痛感しています。オリンピックが延期になり、コロナの収束も見通せない状況の中で、今年は大きな転換期になるのではないかと考えています。危機感を持って、自分の足元から見つめ直さなければならないと感じています。
森田 安全委員会の活動としては、安全大会の開催、建災防全国大会への参加、三島労働基準監督署や熱海土木事務所との合同安全パトロールなどですが、一番大変なのは作業主任者講習や特別教育です。安全委員会の委員の方に資格を取っていただき講師を務めてもらっています。昨年は新たに年4回のフルハーネス特別教育を実施し、委員の方に骨を折っていただきました。委員の労力を軽減するため、今後は外部講師の招待も検討していきます。
山本 総務委員会は協会運営のサポート役を担っており、この1年間は70周年記念事業の準備に関わってきました。数年前は協会の一般社団法人化案を小野会長に提出しました。また、通常は予算や決算の原案精査、検討のほか、関係団体の表彰制度に対する表彰候補者の推薦なども行っています。今後も協会の発展に貢献できるよう尽力していきたいと思います。
高島 労務委員会では2月に静岡どぼくらぶの活動で出前講座を行いました。田方建設業協会の若手の会の協力を得て、静岡県立伊豆総合高校の建築デザイン類型の2年生26人を対象に講座を開き好評でした。出前講座はワークショップ形式でやってほしいとのことで、講師を土木、建築、男性、女性の4チームに分け、時間でローテーションし講師と生徒が直接話せるような講座にしました。インターンシップよりも業界を理解してもらうには良い方法かなと思いました。生徒へのアンケートでは、「固い内容でなくてよかった」「毎年やってほしい」などの声があり、また、若手の講師の話が面白いと評判でした。
石田 企画委員会の主な事業は夏休みに実施する親子現場見学会です。私が委員長になったのは平成20年で、平成21年には建設中だった静岡空港に行き、滑走路を歩き、工事中の施設を見学しました。当時の参加者は三建会員の社員とその家族が対象でしたが、一般社団法人に移行した時期から一般にも募集を掛け始め、市役所の職員親子や地域の方も参加し、毎年親子40組ほどでバス2台を使い県内外の公共工事の現場などに行っています。訪問先の現場では、発注者や元請け企業が事前に資料などを用意し、丁寧に工事を説明していただけるので感謝しています。今後も公益性を持った事業として、一般の方に建設業の魅力を伝え、子どもたちの将来の職業選択のきっかけになればと思っています。
森 建築委員会は主な事業として、静岡県建築士事務所協会と静岡県建築士会と合同で現場見学会を開催しています。これまでに富士山世界遺産センターや日本平夢テラスなどの現場を見学し、大変勉強になっています。思い出深いのは、東日本大震災後に小名浜に行き、津波被害状況や復旧工事を見学したことです。
信用力こそ会員のメリット
司会 次に協会の存在意義についてお伺いします。
小野 先ほども話しましたが、工事完成保証人制度が廃止されてから協会の存在意義が薄れてきたと言われました。しかし、協会員は内的には団結力、外的には信用力があります。それは地域の有力業者が協会員になっているということです。信用力という意味では協会に入っている価値は計り知れないものがあります。行政に対し個別には言えないことでも、協会を通して発信できることがかなりあります。70周年を機に会員の声を一段と行政に伝えたいと思います。
土屋 土木・災害対策委員長として構造改善や入札契約制度改革、ICT活用工事などさまざまな変革に対し前線で対応し、会員と情報を共有してきました。平成19年には小野会長に土木事務所幹部との懇談会を再開していただき、意見交換会では現場の声を伝えています。こうしたことは協会だからこそなし得ることです。一企業では無理です。組織率が低いとの指摘もあるので、会員としてのメリットを訴え会員増強を視野に入れ活動してはいかがでしょうか。
佐野 意見交換会は発注者と協会で行われ、個々とはやりません。協会に参加する意義はここにもあります。
齋藤 昨年の台風15号により伊東市池で大きな災害が発生しました。その時、協会員で施工方法を提示してほしいと発注者側から言われました。発注者がこうした依頼を持ってくるのは団体組織に属しているからであって、個別には頼ってきません。
森田 最近の大規模災害はいつ、どこで発生するか分かりません。発生すると大きなダメージを受けます。今は予防工事が大切です。地域の安全・安心を確保するため、協会を通じて、行政に予防工事を提言することも必要でしょう。われわれの持つ施工力・技術力を発揮し、地域の担い手・守り手としての役割をこれまで以上に果たせば存在意義も高まります。
森 現場見学先の話ですが、日本平夢テラスの設計は隈研吾氏であったため、東部地区で氏が手掛ける物件を探したところ、小山町の足柄駅交流センターがありました。見学のアプローチをしたら、「三建さんとして来ていただけるなら大歓迎」と言われ、協会の存在意義を改めて再認識しました。協会が行う事業は発注者も親切に対応してくれます。
司会 今の建設業界は課題が山積していますが、将来の存続を考えたとき、担い手の問題は重要ですね。
山本 担い手の問題はわれわれにとって頭が痛い問題です。新担い手3法が昨年6月に成立し、今年10月1日からはいよいよ発注者の責務として「著しく短い工期」での契約を禁止する改正建設業法が施工されます。適正な工期を設定の上、時間外労働の縮減や週休2日制が実現できれば新規の担い手も増えるのではないでしょうか。
高島 出前講座では地元で働きたいという声が多かったのは意外でした。労務委員会としては地元高校生に対するPR不足を痛感し反省するばかりです。足元を見直し担い手確保に努めていきたいと思います。
石田 自分の意志により建設業で働きたいと思ってもらえるように、現場見学会で集まった感想文を三建だよりに掲載し、小・中・高校に配っています。感想文では建設業に魅力を感じたという意見が多く、見学会に参加していない子供たちが三建だよりを読み、感想文を通じて建設業の魅力を少しでも感じてもらえれば、将来の担い手につながるのではないでしょうか。
三建だよりは大切な情報源
司会 最後になりましたが、若い世代に伝えたいエピソードはありますか。
土屋 平成6年に「みらい活動研究特別委員長」を拝命した後の平成7年に建設産業政策大綱が策定され、公共事業の供給過剰の話が出ました。それを二宮睦治元会長が全中建で審議しているとき、その資料を私に送ってきて、「どう思うか」と聞いてきました。その時、二宮元会長は「情報は待っていてもだめ。自分から取りに行けば見返りがある」と言っていました。また、「企画は民間で立てて提案しなければ」とも教えてくれました。二宮元会長のご配慮で40代前半から協会活動に参加させていただき非常に勉強になりました。同様に今、若い世代に仕事を与えて、協会への出番をつくってはどうでしょうか。防災対策では数十年後をにらんで今の執行部と次世代との連携も大切なことです。
佐野 二宮元会長が30年前に「協会に参加することは情報だ」と言っていました。今はネットがありますが、情報の取り方は昔も今も変わっていません。毎月発行している三建だよりに対して、周囲からは「よく毎月出しているね」と感心されます。三建だよりは会員にとって大切な情報源の一つです。継続は力なり。70周年を迎えた協会もしかりです。
司会 ありがとうございました。皆さまのお話をお伺いし、強い使命感と責任感を持って、協会運営や委員会活動に取り組んでいることがひしひしと伝わってきました。脈々と受け継がれている「団結力」を改めて感じました。過去、現在、未来にわたり、三建の強さはここにあると確信しました。それでは、小野会長より総括をお願いします。
小野 伊豆地域は大変ポテンシャルの高い、可能性のある地域です。この地域において当協会は70周年を迎えましたが、三建が先頭に立って地域の活性化に寄与しなければならないと思っています。70周年記念誌にある「決意も新たに、理想を胸に団結で生き抜く」姿勢で、今日の皆さんの意見を反映しながら、協会のため、地域のために頑張っていきたいと思います。